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民法改正(1)−定型約款規制について

平成30年10月1日
弁護士 高 弘樹

第1 民法改正について

 民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が,平成29年5月26日に可決・成立し,6月2日に公布されました。現行民法が最初に成立してから120年ぶりの大改正ということで話題になっています。
 そもそも,「民法」という法律は,どういう法律なのかというところから説明します。法体系は大きく「公法」と「私法」に分けることが出来ます。「公法」というのは,国と人との関係を規律する法律です。憲法が代表例です。国家が市民に刑事罰を与える刑法も公法に分類されます。他方で,「私法」というのは,人と人との関係を規律する 法律です。この私法の代表格が民法です。
 民法は,人と人との法律関係を解決する基本的な枠組みや考え方を規定しています。この民法が改正されるのですから,一般市民の我々にとっても非常に重要な改正ということになります。
 今回の民法改正では,非常に多くの条項が改正の対象になっていますが,その中でも「定型約款」を取り上げて説明したいと思います。

第2 定型約款規制について

1 はじめに

 「定型約款」という概念は,改正民法ではじめて規定されましたが,単なる「約款」は現在の取引社会でも頻繁に見かけます。
 例えば,電気・ガス・水道の利用契約,クレジットカードの利用契約,保険契約,銀行取引等をする局面において,契約書の裏や別紙に細かい字で紙面にびっしり契約条項が記載されたものを見たことがある人は多いと思います。これが約款です。
 約款には,契約内容を画一的に定めて大量取引を効率的に実現するという機能があり,現代の取引社会では不可欠と言っても良いでしょう。ただ,約款は,民法の契約に関する基本的な考え方(合意原則)との関係で問題がない訳ではありません。すなわち,民法では当事者の意思の合致(合意)があって契約が成立し,当事者は契約内容に拘束されると考えられています。ところが,契約を締結する際に,約款の条項を細かく確認する人は稀ですし,約款の内容は,一方当事者が決めています。そのため,約款の内容がそのまま契約内容に組み入れられると,他方当事者が不測の損害を蒙る危険性があります。
  そこで,改正民法では,「定型約款」という概念を規定したうえで,定型約款の内容が契約に組み入れるために必要な規制(組入規制)と,契約内容に組み入れられた後の内容に関する規制(不当条項規制)を新設しました。順番に見ていきます。

2 「定型約款」とは

 まず,改正民法は,規制対象とする約款を「定型約款」という概念を用いて限定しています。
 改正民法548条の2第1項は,「定型約款」とその関連概念である「定型取引」について,次のとおり定義しています。

 「定型約款」:定型取引において,契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体。
  「定型取引」:ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって, その内容の全部又は一部が画一的であることが双方にとって合理的なものをいう。

 ここでは「不特定多数の者」「画一的」「双方にとって合理的」ということがポイントです。すなわち,誰と契約するかに関わらず,内容が同じであって,そのことが双方の当事者にとって合理的である取引を「定型取引」というということです。そして,この定型取引において,契約内容とすることを目的として特定の者により準備された条項の総体が「定型約款」です。

3 組入規制

 それでは,「定型約款」はどのような場合に契約の内容に組み入れられるのでしょうか。

 第一に,「定型取引を行うことの合意」が必要です。例えば,どの商品をいくらで購入するのかという基本となる合意が,まず必要となります。

  第二に,…蠏震鶸召魴戚鵑瞭睛討砲垢襪箸い合意(組入合意),又は定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示(組入表示)することが必要です。

 ,鰐泳,旅膂娶饗Г隆靄椶肪藜造糞定ですが,△倭汎表示を前提に定型取引合意をした者は,定型約款の内容に合意したものと考えても良いという発想だと思われます。なお,組入表示は,定型約款を契約の内容とする旨を表示すれば足り,定型約款の内容を開示することまでは求められておりません。定型約款の内容を知りたい場合には個別に請求する必要があり,相手方がその請求を拒否した場合には,定型約款の契約内容への組入れが認められないという構造になっています(改正民法548条の3第2項)。

4 不当条項規制

 次に,定型約款が契約内容に組み入れられたとしても,その内容すべてが無条件に契約内容として拘束力を持つ訳ではありません。すなわち,

 〜蠎衒の権利を制限し,又は相手方の義務を加重する規定であって,

 その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして民法第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは,合意をしなかったものとみなされます(改正民法548条の2第2項)。

 ,竜制には,何と比べて権利を制限したり,義務を加重したのかという比較の基準が明記されておりませんが,この点は消費者契約法10条の規定(「法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して」)が参考になると考えられております。
 △竜制にある民法第1条第2項は,いわゆる信義則(信義に従い誠実に行動する という原則)に関する規定であり,定型約款の特殊性を考慮して信義則に反するかど うかを判断するという趣旨です。これによれば,条項の内容が不当な場合だけではな く,定型約款の態様や実情等からそのような条項が含まれていることは予測できない 条項(不意打ち条項)も契約内容にならない可能性があるとされております。

第3 最後に

 消費者契約法にも不当条項規制があるので,改正民法の定型約款規制との関係が問題になります。消費者契約法は「事業者」と「消費者」間の契約(消費者契約)を規律する法律です。他方,民法は最初に説明したとおり,「人」と「人」との法律関係を規律する法律です。そのため,「事業者」と「消費者」間の契約はもちろん「事業者」と「事業者」間の契約も規律の対象に含まれます。
 このように消費者契約については,消費者契約法も改正民法もどちらも適用されますので,消費者契約法だけで十分です。そのため,改正民法の不当条項規制が意味を持つのは,事業者間で定型約款が使用される場合ということになります。

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