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労働契約法改正について

2013年8月  猖榾Ъ

1.労働契約法の一部を改正する法律(平成24年8月10日公布日)

 昨年,労働契約法が改正されました。改正された内容はすでに効力を生じています。この改正は,有期労働契約者,つまり労働期間を1年や2年と限定して雇用された労働者を守るためのものとされています。今回は,この労働契約法の改正について,お話ししたいと思います。

 改正内容のポイントは以下の3つです。
 〔鬼労働契約への転換
 ◆峺杙澆疔〕」の法定化
 I垤舁な労働条件の禁止

2.改正の趣旨

 最初に紹介したように,今回の改正による3つのルールはいずれも、有期労働契約を締結してる労働者、つまり、一定期間に限定して雇用されている労働者の保護を目的とするものです。

 一昔前まで日本では当然だった終身雇用制度が、現代では当たり前でなくなっていますよね。
 そもそも日本では、労働者の生活の安定を重視して、一度、期間を定めずに雇用した労働者を解雇することは、容易にはできなくなっています。
 しかし、不景気になると、いったん雇ってしまった労働者の賃金は企業などの使用者にとって負担となります。
 そこで、労働力を派遣労働者や有期労働契約にもとづく労働者によって確保し、いざというときに、派遣契約を打ち切ったり、有期労働契約の更新をしないことで、人件費を容易に削減できるように使用者は考えるようになりました。

 これは、使用者側にとっては、確かに都合の良いものです。
 しかし、労働者にとっては、これまでの終身雇用に比べると、安定性に欠け、生活の基盤が失われかねない問題を含んでいます。

 そこで、有期労働契約による労働者を保護し、その生活の安定をはかるため、今回の法改正が行われたということになっています。

 では、具体的に、今回の改正について、労働者はどんなことが有利になったのでしょうか。また、使用者としては、今回の改正によって,どんな場合にどんなことを注意していくべきでしょうか。双方の立場から考えてみたいと思います。

3.無期労働契約への転換

 これは、有期労働契約が繰り返し更新され、通算5年を越えたとき、労働者の「申し込み」により、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるというルールです。例えば,1年の有期労働契約が毎年更新され,4度更新された場合,5度目の更新で通算5年を超えることになり,労働者は無期労働契約への転換を使用者に対して求めることができます。この際,労働者が申し込めば,使用者はその申し込みを承諾したものとみなされるため,申込時の有期労働契約が終了する翌日から無期労働契約に転換されることになります。

 <労働者側>
 当然、有期労働者としては、5年勤めれば(具体的には、5年まるまる勤めていなくても、申し込みができるケースもあります。)無期転換の申し込みができるようになることを知識として持ち、自分自身の希望に添った選択ができるよう備えることが大切になりますね。
 無期労働契約への転換の申し込みができる条件について,個々の事情による確認が必要になります。例えば,契約更新による労働が常に継続しておらず,途中に空白期間があっても,その空白期間が6か月以内であれば,空白期間の前後の有期労働契約期間を合算できる場合があります。ですので,自分自身の場合にどうなのかは,専門家に事前に相談するなどしておくことをおすすめします。

 <使用者側>
 使用者側としては,無期転換の申込みがあれば使用者は承諾したものと見なされ,無期労働契約がその時点で成立しますので,無期労働契約への転換の可能性を踏まえた雇用を事前に検討しておくことが必要です。当然,特定の労働者との契約更新を拒みたい場合,無期転換の申込みが可能になる前に契約を終了しておかなければ,無期転換を申し込まれるリスクを負うことになります。
 また,職務や勤務地,賃金や労働時間などの労働除権は,特に定めが無い限り,直前の有期労働契約と同一の内容で無期労働契約の内容にに反映されますが,労働協約や就業規則,または個々の労働契約によって別段に定めがあれば,変更が可能です。そのため,事前に労働協約や就業規則で会社の事情に適した別段の定めを規定しておくことも必要です。
 なお,無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とすることは認められませんので注意してください。

 では,無期転換の申込みはどのような場合に可能になるのでしょうか。契約期間が1年の場合と3年の場合を例にとって考えてみましょう。
 <契約期間が1年の場合>
 特に空白期間なく毎年更新された場合,5回目の更新により通算6年目の労働契約になれば,無期転換の申し込みが可能になります。
 また,6年目に無期転換を申し込まず,さらに更新した場合,7年目以降でも引き続き無期転換の申し込みは可能です。

 <契約期間が3年の場合>
 契約期間が3年の場合,1度更新すれば,労働契約期間は通算6年になりますので,1度の更新後,つまり4年目以降に無期転換の申し込みが可能になります。
 つまり,3年の契約期間で更新した場合,まるまる5年働いていなくても,無期転換が可能になるので注意が必要です。

 ちなみに、改正内容の詳細は、厚生労働省のホームページなどに図を示した案内が出ていますので,参考にしていただければと思います。

4.「雇止め法理」の法定化

 まず,「雇止め法理」とはなんでしょうか。
 有期労働契約は,労働者が継続して働きたいと思っても,施用者が更新を拒めば,期間満了により雇用が終了します。これを「雇止め」といいます。
 使用者からすれば,一定の労働期間で労働者との関係を清算することができるため,景気が良く労働力が必要な時期だけ労働者を増やし,景気が悪くなって必要なくなれば更新を拒むことで労働力の調整をはかることが出来るメリットがあります。
 しかし、期間の定めがあっても,それが形骸化していて,更新されるのが当たり前になっているような職場であれば,労働者からすれば、まだまだ働けると期待してしまいますよね。そこで,これまで,判例上,雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとき」には,雇止めが認められず,これまでと同一の労働条件で有期労働契約が更新されるとされていました。
この判例の考えを「雇止め」法理といい,今回,法律でその考えが定められたのです。

 <労働者側>
 今回の法制化に伴い,法の適用を受けるためには,労働者からの有期労働契約の更新の申し込みが必要となっています。
 ですので,契約が更新されると期待しているにも関わらず,使用者が更新を拒んだ場合,労働者としては,更新を望むことを明確に示しておく必要があります。
 これは,使用者からの更新拒絶に対して,「嫌だ,困る。」と言った表現でも良いと解されます。また,期間満了後でも,遅滞なく申し込みをすれば法の適用を受けられます。
 もっとも,後でもめないためにも,更新の求めたことが後で明らかにできるように,できれば書面で提出して写しをとっておいたりできれば良いですね。

 <使用者側>
 使用者としては,有期労働契約の更新の際,更新が当然と思われないように,きちんと更新の際の手続をとっておくことが大切になります。これは,今回の法制化前から,必要とされていたことですので,今回の法制化で特に変化はありません。
 特に,有期労働契約でありながら,契約更新のために書面も交わさず,また労働者との話し合いもしていない場合,労働者の更新に対する期待が合理的なものと考えられてしまいますので,注意してください。
 できれば,もめ事になる前に,社内で適切な手続をとるように社内のルールを整備しておく必要があります。

5.不合理の労働条件の禁止

 これは,同一の使用者と労働契約を締結している,有期契約労働者と無期契約労働者との間で,期間の定めがあることによって不合理に労働条件を相違させることを禁止するというものです。

 ここで労働条件の相違が不合理であるか否かは,
 /μ海瞭睛董紛般海瞭睛撞擇單該業務に伴う責任の程度)
 当該職務内容及び配置の変更の範囲(今後の見込も含め,転勤,昇進といった人事異動や本人の役割の変化などの有無や範囲)
 その他の事情(合理的な労使の慣行など)
といった要素を総合的に考慮して,期間の定めがあることによる相違として不合理と認められるかによって判断することになります。
 そのため,単に労働条件が異なるだけで必ず不合理とは限りません。
 ※例えば,定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が定年前の他の無期契約労働者の労働条件と相違するとしても,定年の前後で職務の内容や配置の変更の範囲などが変更されることが一般的であることからすると,特に事情が無い限り不合理とはいえないと考えられます。

 <労働者側>
 労働者としては,特に有期労働契約者としては,不合理な労働条件で更新された場合,そのまま泣き寝入りせず,相違の理由を確認し,合理的な説明が得られなければ,専門家に相談するなどしてゆくことが考えられます。

 <使用者側>
 使用者としては,もし不合理な相違と認められればそのような労働条件の定めは無効となるだけでなく,故意・過失による権利侵害により損害賠償が認められる可能性もありますので,相違を設ける根拠を事前に明示し,労働者の了承を得ておくなど,紛争とならないよう事前の対策が大切になります。

6.まとめ

 以上,今回の労働契約法の改正についてつらつらと書きましたが,現在,有期労働契約者や派遣労働者など,労働者の保護が社会的に問題となっています。
 今後も,法改正が続くことが考えられますので,使用者側も労働者側も,そうした報道などに注意してゆく必要があるでしょう。
 ただ,現実にはすべてを把握することは困難です。
 疑問に思ったり,困ったときには,遠慮せず専門家に相談することをおすすめします。
 また,使用者側の方々も,定期的に改正に伴う対応を行い,紛争を未然に防止する措置を検討されることをおすすめします。

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